坪400万円の一等地。それでも3,000万円までしか出せない理由
先日、文京区内の古家付き土地について、買取のご相談をいただきました。
立地は、いわゆるバリバリの一等地です。
最寄りのJR駅から平坦で徒歩10分もかからず、
土地は約50㎡。
建物は昭和30年代築の木造2階建てで、
延床面積は約80㎡あります。
一般的な流通相場を見ると、
坪400万円を下らない地域です。
立地だけを見れば、
かなり魅力的な物件です。
しかし今回、
当社が購入するためには大きく3つの課題がありました。
・前面道路の幅員が最大でも3m未満
・私道で、測量未実施での取得が条件
・奥の建物と一部が接続している
道路や私道の問題は、
当社が普段から売却困難な不動産で向き合っている課題です。
ただ今回は、
それぞれが費用だけではなく、
時間や将来の売却にも影響する可能性がありました。
法律上の道路でも車が入れない
まずは前面道路です。
本件は水路と接しているため、
道路がうねるような形状になっています。
幅員も一定ではなく、
広くなったり狭くなったり。
最も狭いところでは、
1m前後しかありません。
建築基準法上の道路ではありますが、
現実には車両が敷地まで進入できません。
そうすると、
古家を解体するにも、
新しい建物を建築するにも、
通常の現場とは条件が大きく変わります。
トラックや重機を入れることができないため、
資材の搬入や解体した廃材の搬出にも、
人の手が必要になります。
当然、
工事費用は割高になります。
「再建築できる土地だから問題ない」
というほど単純ではありません。
法律上建築できることと、
現実的な費用で建築できることは、
別の問題です。
私道所有者は15名+2社
次に私道です。
私道に接している不動産では、
建築工事や上下水道、ガスなどの工事を行う際、
通行・掘削承諾書が必要になる場面があります。
今回、
私道の登記簿を確認すると、
甲区だけで5ページありました。
過去に遡って所有者を整理すると、
15名+2社。
これだけの関係者がいます。
果たして全員から、
必要な承諾を取得できるのか。
一人ひとり連絡先を調べ、
事情を説明して、
承諾をお願いする。
相続が発生していれば、
さらに相続人を調査しなければならない可能性もあります。
一人でも話が進まなければ、
そこでプロジェクトが止まる可能性があります。
少し大げさに言えば、
「承諾書を集めているだけで、プロジェクトの12カ月が終わってしまうんじゃないだろうか」
と思うほどです。
さらに今回は、
測量未実施での取得が条件です。
不動産会社が買い取る場合、
こうした費用も期間も確定していないものについても、
リスクとして購入価格に織り込む必要があります。
建物を壊すだけなら話は簡単
そして今回、
最も判断が難しかったのが建物です。
紹介いただいた仲介会社に確認しても、
現在の形になった経緯や詳細は分かりませんでした。
分かっているのは、
本件建物の奥にある水回り部分の壁の一部が、
さらに奥の隣地建物の壁と接続しているということ。
現時点では、
その情報と画像しかありません。
自分たちの建物を壊すだけなら、
話はそれほど難しくありません。
通常の条件なら、
多く見積もっても200万円程度。
今回は車両や重機が入れないため、
手作業による割増を考えると、
300万円前後までかかる可能性があります。
でも、
問題は壊すことではありません。
「壊した後、残された建物はどうなるのか」
です。
接続している向こう側の壁は、
外壁なのか。
それとも内壁なのか。
こちらの建物を切り離したことで、
それまで建物内部だった部分が、
そのまま外部に露出する可能性もあります。
当然、
雨風にさらされる状態で終わらせるわけにはいきません。
接続部分の切り離しに加えて、
隣地建物の外壁補修や防水処理などが必要になる可能性があります。
当社では、
この部分だけでも追加で300万円前後を想定しました。
工務店にも確認したところ、
状況によっては、
それ以上になる可能性もあるとのことでした。
坪400万円の地域でも坪400万円では考えない
ここからが、
実際の買取価格の検討です。
この地域の一般的な流通相場は、
坪400万円を下らない水準です。
しかし、
今回の土地には車が入りません。
一般消費者向けの戸建用地として考えた場合、
車庫を設けられないことは、
購入できる人を限定する要因になります。
そのため当社では、
今回の土地の出口を、
坪300万円前後で想定しました。
総額では、
4,600万円~4,700万円程度。
このあたりまでなら、
売却できる可能性があるのではないかと考えました。
もちろん、
4,600万円~4,700万円で売れることが確定しているわけではありません。
そこから、
・道路条件による工事費の増加
・私道の通行、掘削承諾取得に伴う費用とリスク
・測量費用
・建物の解体、切り離し費用
・隣地建物の外壁、防水補修
・購入時、売却時の仲介手数料
・登記費用や取得に伴う諸費用
・保有期間中の税金
・販売にかかる経費
などを差し引いて考えます。
損益分岐点は約3,500万円
これらを踏まえて計算すると、
当社の損益分岐点は、
約3,500万円でした。
3,500万円で購入して、
想定どおり4,600万円~4,700万円で売却できたとしても、
事業として利益が残らない計算です。
つまり、
3,500万円から下回った部分が、
当社の事業利益になります。
踏まえて、
今回当社が回答した購入希望価格は、
3,000万円前後。
ここが目いっぱいと判断しました。
一等地だから高く買えるとは限らない
現在の市況を考えると、
売主様の希望価格は、
おそらく当社の提示価格より高いと予想しています。
文京区の一等地で、
周辺では坪400万円を超える土地が流通しています。
そこで、
「3,000万円前後です」
と回答されれば、
安いと感じるのも当然だと思います。
しかし、
不動産会社が購入するときに考えているのは、
現在の周辺相場だけではありません。
この不動産を購入した後、
何を解決しなければならないのか。
そのために、
いくらかかるのか。
どのくらい時間がかかるのか。
そして、
すべてを解決した後、
最終的にいくらで売れるのか。
そこから逆算して、
購入できる価格を考えています。
問題のある不動産だから買わないわけではない
良い場所にあるから、
必ず高く買えるわけではありません。
逆に、
問題がある不動産だから、
買わないわけでもありません。
問題を解決する方法があり、
その費用と時間、
そしてリスクをある程度数字に置き換えることができれば、
当社にとっては十分に購入を検討できる物件になります。
今回の売主様からは、
現在回答を待っているところです。
恐らく当社には、
売却を検討する比較的初期の段階でご相談いただいたのだと思います。
これから仲介会社や他の不動産会社にも相談し、
さまざまな意見や査定価格を聞いたうえで、
判断されることになるかもしれません。
当社としても、
無理に買う必要はありません。
ただ、
条件が合えば買いたい。
「相場が高い場所だから高く買う」
のではなく、
「出口から逆算して、解決できる価格なら買う」。
今回も、
その考え方で回答しています。